新CBのエンジン [400X日記]
実はこのネタ、1か月以上前に用意していたものなんですが、なかなか他のネタに押しのけられて、半分お蔵入りになっていたものです。
てっきり新CB400系と新CB500系のエンジンは、ボア(シリンダ及びピストン径)の違いで排気量を変更していると思い込んでいましたが、実際はストロークの変更で排気量変更をしているそうです。
ミニバイク界では手っ取り早いパワーアップチューニングとしてボアUPが上げられるので、排気量変更=ボア変更っていう勝手な思い込みが脳内を支配していたのですが、ボア変更って実はそんなに安易な方法ではないんですよね。
ボアダウンの問題点 その一
ピストン及びシリンダを小径化すると、ヘッドとシリンダの間に無駄な空間ができてしまう。
この無駄な空間によって圧縮比が下がったり、燃焼効率が悪くなったりしてしまうので、ボア径変更の際にはヘッドも変更しないといけない。
ボアダウンの問題点 その二
バイク用エンジンにはライナー(上図の赤車線部分)と言うものが概ね使用されないということなので、内径の違うシリンダブロックの製造もしくは加工が必要になってしまう。
※ライナーを打ち込む方法は、シリンダブロックとクランクケースが一体化した自動車用エンジンに多く使用される手法で、ライナーがピストンの摺動性を高めています。シリンダブロックとクランクケースが別体のバイク用エンジンでは、ライナーを打ち込まない代わりにシリンダ内壁にメッキ処理をするなどして摺動性を高めています。これらは製造上の効率等々によって使い分けられていますね。
と言うわけで、ボア変更では低コスト化が図れないことがわかりました。
ミニバイクのボアアップキットだって、シリンダブロック、ピストン、ヘッドとエンジンの主要な部分をごっそり換えてるわけですからね~。
で、先日(と言っても5月頭の話ですが…)あるバイク雑誌に400系と500系のエンジンは「クランクシャフトとコンロッドを変えただけ」とあったので、はじめはどういうこと?って思っちゃいましたが、よくよく考えたらなるほどクランクシャフトの回転径を変更すればストロークが変更できて、排気量変更ができるんですね~。
で、あらためてスペックを比較してみたら…。
CB500系 CB400系
総排気量 471㎤ 399㎤
ボア×ストローク 67×66.8㎜ 67×56.6㎜
圧縮比 10.7 11
最大出力 35kw/8,500rpm 34kw/9,500rpm
最大トルク 43Nm/7,000rpm 37Nm/7,500rpm
となっています。
500系に対し400系はストロークが10.2㎜短くなっています。
下の図のようにストローク(S)=上死点と下死点の位置を決めるのはクランクシャフトの回転径(R)なので、ストロークを10.2㎜短くするためにはクランクシャフトの回転半径を5.1㎜小さくすれば良い。
しかし、ここで僕はまたしても間違いを犯します。
「クランクシャフトとコンロッドの変更」と“ショートストローク化”のキーワードから、クランクシャフトの回転径の小径化と同時にコンロッドも短くするものだと勘違いしてしまったのですが…
Bのように、コンロッドを短くしちゃうと上死点での燃焼室が広くなりすぎて圧縮比がものすごく下がってしまうので具合が悪いです。
だからといって、ピストンの上死点位置を押し上げるためにクランクシャフトの取付位置を変更するとなると、クランクケースを別で用意するか、シャフトの取付位置を変えられるような工夫をしないといけないので、それではボア変更のパターンと同じでコストが余分にかかってしまいます。
で、やっとCのようにクランクシャフトの小径化に対してコンロッドを長くすることで、シャフトの取付位置と上死点位置の変更をせずに済むというところに辿り着きました。
そういうことだったんですね~。
ただし、400系の方が圧縮比が高いことから推察すると、単純にクランクシャフトを5.1㎜小径化した分コンロッドを5.1㎜延長してるのではなく、さらにコンマ何㎜かコンロッドを延長して上死点位置をわずかに高くしているのではないか?と推測されます。
ヘッド(燃焼室)に変更が無いとすれば、総排気量が小さくなった分ピストンの上死点位置を上げて燃焼室を狭くしてやらないと圧縮比は上がらないはずなので…
というわけで、実際のところはクランクシャフトとコンロッド以外が全く同一の部品でできているのか否かはわかりませんが、一応こんな感じでコストをあまりかけずにうまいこと二種類の排気量のエンジンを造ったのだな~と感心しています。
と同時に、400ccの方に絞って見ると、コンロッドの延長に使われた分のエンジン高をほんとは低くできたわけで、ちょっと無駄が存在するんだなぁとも言えます
まぁ、レース用エンジンとは違うので、そこまでシビアにならなくてもイイんですけどね~
ちなみに、最高出力の部分に注目してください。
400と500で馬力はほとんど変わりません。
これは日本の普通二輪にあたるヨーロッパの新しい免許カテゴリー“A2”に対応させるために、500系の方はわざとパワーを押さえている(A2は排気量無制限ながら、出力35kwを越える物は不可)からに他ありません。
だったら、ヨーロッパでも400ccで出せばよかったじゃん?KTMデューク390の例もあることだし!って思ったりもしますが…
で、その答えがU4(Under4)と言うバイク雑誌の最新号に掲載されていました。
そもそもが逆だったのです。
デビューは500㏄の方が先でしたが、元々は車体もエンジンも400㏄で開発したものを、各国にアンケートをとったところ、400ccならいらないけど500㏄なら欲しいと言ってきたので、日本で400ccを売るためのコストダウンの為に欧米向けに500cc版を造ったというのが真相だそうです。
他社のように欧米向けの物を日本用にアレンジして低コスト化を図るのではなく、日本用に造った物を欧米向けにアレンジして大量に売ることでコストダウンを図るという逆転の発想!
いいね~
なんか、ますますHONDAが好きになっちゃったな~
さらに、その後収集した情報によると、実はこの新CB400/500系エンジンはCBR600RRと同じピストンを使っているらしい。
確かにCBR600RRもボア径は67㎜と同じだけど…。
このようにして有り物をうまく利用してコストダウンを図りつつ新エンジンを設計していたとすれば、なかなか狡猾ではないか!?
低コスト化へのこだわりがハンパないというか、言い方変えるとセコくねぇか?
エンジンってのは排気量と狙った特性・性能を考えてボア×ストロークを決定するのが理想だから、エンジン屋のYAMAHAでは絶対(?)やらない手法だよね?
まぁ、こだわり過ぎてWR250R/Xはあんな値段になっちゃいましたが。
でもね、どんなにセコい造り方してても、イイものが出来ればイイんです!
実際乗ってみて、CBR250RやCRF250で気になったヘッド周りのメカノイズなんかは非常に少ないし、Vツインとは微妙にニュアンスが違うけど、よく似た心地良いブロロロっていう鼓動感が僕の趣向に非常に合ってて、うっとりしちゃいます
やっぱツインっていいな~。
四輪の方も次は二気筒にしたいな~
てっきり新CB400系と新CB500系のエンジンは、ボア(シリンダ及びピストン径)の違いで排気量を変更していると思い込んでいましたが、実際はストロークの変更で排気量変更をしているそうです。
ミニバイク界では手っ取り早いパワーアップチューニングとしてボアUPが上げられるので、排気量変更=ボア変更っていう勝手な思い込みが脳内を支配していたのですが、ボア変更って実はそんなに安易な方法ではないんですよね。
ボアダウンの問題点 その一
ピストン及びシリンダを小径化すると、ヘッドとシリンダの間に無駄な空間ができてしまう。
この無駄な空間によって圧縮比が下がったり、燃焼効率が悪くなったりしてしまうので、ボア径変更の際にはヘッドも変更しないといけない。
ボアダウンの問題点 その二
バイク用エンジンにはライナー(上図の赤車線部分)と言うものが概ね使用されないということなので、内径の違うシリンダブロックの製造もしくは加工が必要になってしまう。
※ライナーを打ち込む方法は、シリンダブロックとクランクケースが一体化した自動車用エンジンに多く使用される手法で、ライナーがピストンの摺動性を高めています。シリンダブロックとクランクケースが別体のバイク用エンジンでは、ライナーを打ち込まない代わりにシリンダ内壁にメッキ処理をするなどして摺動性を高めています。これらは製造上の効率等々によって使い分けられていますね。
と言うわけで、ボア変更では低コスト化が図れないことがわかりました。
ミニバイクのボアアップキットだって、シリンダブロック、ピストン、ヘッドとエンジンの主要な部分をごっそり換えてるわけですからね~。
で、先日(と言っても5月頭の話ですが…)あるバイク雑誌に400系と500系のエンジンは「クランクシャフトとコンロッドを変えただけ」とあったので、はじめはどういうこと?って思っちゃいましたが、よくよく考えたらなるほどクランクシャフトの回転径を変更すればストロークが変更できて、排気量変更ができるんですね~。
で、あらためてスペックを比較してみたら…。
CB500系 CB400系
総排気量 471㎤ 399㎤
ボア×ストローク 67×66.8㎜ 67×56.6㎜
圧縮比 10.7 11
最大出力 35kw/8,500rpm 34kw/9,500rpm
最大トルク 43Nm/7,000rpm 37Nm/7,500rpm
となっています。
500系に対し400系はストロークが10.2㎜短くなっています。
下の図のようにストローク(S)=上死点と下死点の位置を決めるのはクランクシャフトの回転径(R)なので、ストロークを10.2㎜短くするためにはクランクシャフトの回転半径を5.1㎜小さくすれば良い。
しかし、ここで僕はまたしても間違いを犯します。
「クランクシャフトとコンロッドの変更」と“ショートストローク化”のキーワードから、クランクシャフトの回転径の小径化と同時にコンロッドも短くするものだと勘違いしてしまったのですが…
Bのように、コンロッドを短くしちゃうと上死点での燃焼室が広くなりすぎて圧縮比がものすごく下がってしまうので具合が悪いです。
だからといって、ピストンの上死点位置を押し上げるためにクランクシャフトの取付位置を変更するとなると、クランクケースを別で用意するか、シャフトの取付位置を変えられるような工夫をしないといけないので、それではボア変更のパターンと同じでコストが余分にかかってしまいます。
で、やっとCのようにクランクシャフトの小径化に対してコンロッドを長くすることで、シャフトの取付位置と上死点位置の変更をせずに済むというところに辿り着きました。
そういうことだったんですね~。
ただし、400系の方が圧縮比が高いことから推察すると、単純にクランクシャフトを5.1㎜小径化した分コンロッドを5.1㎜延長してるのではなく、さらにコンマ何㎜かコンロッドを延長して上死点位置をわずかに高くしているのではないか?と推測されます。
ヘッド(燃焼室)に変更が無いとすれば、総排気量が小さくなった分ピストンの上死点位置を上げて燃焼室を狭くしてやらないと圧縮比は上がらないはずなので…
というわけで、実際のところはクランクシャフトとコンロッド以外が全く同一の部品でできているのか否かはわかりませんが、一応こんな感じでコストをあまりかけずにうまいこと二種類の排気量のエンジンを造ったのだな~と感心しています。
と同時に、400ccの方に絞って見ると、コンロッドの延長に使われた分のエンジン高をほんとは低くできたわけで、ちょっと無駄が存在するんだなぁとも言えます
まぁ、レース用エンジンとは違うので、そこまでシビアにならなくてもイイんですけどね~
ちなみに、最高出力の部分に注目してください。
400と500で馬力はほとんど変わりません。
これは日本の普通二輪にあたるヨーロッパの新しい免許カテゴリー“A2”に対応させるために、500系の方はわざとパワーを押さえている(A2は排気量無制限ながら、出力35kwを越える物は不可)からに他ありません。
だったら、ヨーロッパでも400ccで出せばよかったじゃん?KTMデューク390の例もあることだし!って思ったりもしますが…
で、その答えがU4(Under4)と言うバイク雑誌の最新号に掲載されていました。
そもそもが逆だったのです。
デビューは500㏄の方が先でしたが、元々は車体もエンジンも400㏄で開発したものを、各国にアンケートをとったところ、400ccならいらないけど500㏄なら欲しいと言ってきたので、日本で400ccを売るためのコストダウンの為に欧米向けに500cc版を造ったというのが真相だそうです。
他社のように欧米向けの物を日本用にアレンジして低コスト化を図るのではなく、日本用に造った物を欧米向けにアレンジして大量に売ることでコストダウンを図るという逆転の発想!
いいね~
なんか、ますますHONDAが好きになっちゃったな~
さらに、その後収集した情報によると、実はこの新CB400/500系エンジンはCBR600RRと同じピストンを使っているらしい。
確かにCBR600RRもボア径は67㎜と同じだけど…。
このようにして有り物をうまく利用してコストダウンを図りつつ新エンジンを設計していたとすれば、なかなか狡猾ではないか!?
低コスト化へのこだわりがハンパないというか、言い方変えるとセコくねぇか?
エンジンってのは排気量と狙った特性・性能を考えてボア×ストロークを決定するのが理想だから、エンジン屋のYAMAHAでは絶対(?)やらない手法だよね?
まぁ、こだわり過ぎてWR250R/Xはあんな値段になっちゃいましたが。
でもね、どんなにセコい造り方してても、イイものが出来ればイイんです!
実際乗ってみて、CBR250RやCRF250で気になったヘッド周りのメカノイズなんかは非常に少ないし、Vツインとは微妙にニュアンスが違うけど、よく似た心地良いブロロロっていう鼓動感が僕の趣向に非常に合ってて、うっとりしちゃいます
やっぱツインっていいな~。
四輪の方も次は二気筒にしたいな~
500ccと400ccってこんな感じで排気量を調整してたんですね。
相変わらずコストダウンはホンダ上手だな♪
by harukichi (2013-06-25 21:09)
E/Gに関しては2ストと一緒に私の青春がぁ・・・終わった!
(まぁ・・・バブル世代と、後ろ指指され組・・・かもしれません。)
この先は、セコイ、セコイE/Gを褒め称える老後をおくります。
by hanamura (2013-06-25 21:20)
700Xの場合、ちょっとコストダウンしすぎ?
その分、アフターパーツにお金が、かかります
けどね(笑)
by ごろすけ (2013-06-25 22:54)
700/400は共にシリンダ・クランクケース一体だからボア変わると金型別物になっちゃいますからね^^;
でも4輪作ってて、2輪トップメーカーのホンダだからこそ出来たエンジンだと思いますです
by 番茶犬 (2013-06-26 06:48)
案外この手の手法はありますよね~
恐るべし共通部品化です。
by たくや (2013-06-26 09:17)
わたしのイメージだと、コンロッドやクランクシャフトって熱間鍛造で作られているはずから、鋳造のシリンダーやピストンよりも、金型のコストが莫大に高くなるように思えてしまいます。
鋳造金型なら入れ子で内径の変更に対応することもできそうですしね。
それに、エンジンの出力特性や過渡特性もボア変更に比べるとガラッと変わるから、開発費も2基のエンジンを設計するぐらいかかるんだろうなあなんて、思ってしまいがちです。
でも、ピストンやシリンダーを共通化したほうが、むしろ安くなるんですか。
意外でした。
スズキの4輪用エンジンの場合は逆に、旧型は設計の共通化を図ってコストを落とし、燃費を犠牲にした設計をしていたのですが、わりと最近、アルトエコから導入された新型は3気筒660cc専用設計として、コストよりも燃費に重点を置いたと、自動車技術界の学会誌で読んだ記憶があります。
2気筒の4輪ですか…フィアットとかシトロエンの古くて小さいのはわたしも大好きですねえ。
古いのに限らず、あえて2気筒で出してきた新型のフィアット500もいいです。
日本車もそろそろ固定観念を捨てて2気筒に回帰してもいい頃なんですけどね。
by nozzy (2013-06-26 17:39)
ホンダはバイクを20年・30年前の価格に戻す宣言をしているので、コストダウンに心血注いでますね~(^^
>harukichiさん
2st全盛期にはバイクに精通してなかったわたしです(^^;
>hanamuraさん
NCはなんであんなに安くできたんでしょうね?
しかも燃費も尋常じゃない(^^;
>ごろすけさん
最近はバイクも一体型エンジンが主流ですよね。
加工技術が高まって、スリーブ打ち込まなくても良くなってきてるんでしょうね。
>番茶犬さん
おそらく、CBR600RRのピストン流用ありきで設計されたんじゃないか?って思います(^^;
>たくやさん
コストコントロールがどこにどのように働いているのかは知る由もないですが、ホンダは何か良いポイントを見つけたんでしょうね(^^;
四輪の方は小排気量少気筒の波がヨーロッパに来てますからね。
日本もダイハツがコペン後継車で二気筒を出す予定ですし、楽しみです(^0^)
>nozzyさん
by よっすぃ〜と (2013-06-26 20:28)